36回の発表会おめでとうございます。早いもので長野先生とのお仕事も、8年目を迎えました。36回もの長きにわたり、しかも毎年新しい作品を創りだしてゆく長野先生の情熱、創造性、忍耐力、集中力には驚くばかりです。去年も、ダンサーとして、怪我をされたのですが見事に乗り越えてこられました。
長野先生の作品はいつも素敵な音楽と他では観れない構成、振付です。たとえ知っている曲でもそこには独自のワールドが展開されます。それには長野先生の創作ノートに秘密があるように思います。1度覗いた事が有るのですが、まっ黒に皆のポジションや動きが記されていて、いつもバレエの事を考えていらっしゃるんだなと感心させられました。
私も昔、演出の仕事をしていたので分かりますが、創作は孤独な作業です。それを乗り越えていけるのは生徒さんに対する大きな愛があるからでしょう。
いつも夏でしたが、今年は冬です。どんな与里子ワールドが繰り広げられるのか、楽しみです。
第36回発表会 パンフレットより抜粋
この度の発表会のバレエ使用曲を見て、いささか驚いてしまった。プーランク、ブルッフ、ビゼー、サティ「ジムノペディ」、バッハ「シャコンヌ」。私にとっては長年夢に描いたバレエ・パラダイスの曲集だったからである。
恐らく、音楽コンサートとしても、これだけ魅力のある優美なアルバムは滅多にないと思う。私如きマニアックは、バッハの「シャコンヌ」と聴いただけでも、この一曲のためにバレエを見にいくに違いない。音楽と一体化したバランシンのものを見た時の感動が忘れられないからだ。
今回の発表会のすべての作品が、偶然かもしれないが、このような稀に見る「名曲」で出来上がっているから驚くのだ。
これは当然、バレエ研究所の主宰者、長野与里子の「感覚」、主張の結果と見るべきだろう。考えてみても、全国で何千とあるバレエ研究所で、これほど「豪華」なプログラムを組める所は他に知らない。それほど長野与里子バレエ研究所はユニークなのである。
やはり、長野さんの長年の誠実なバレエ研究の結実がこのような偶然の僥倖を生み出したものであろう。発表会のご成功を切に祈るものである。
前田 允(まえだ ただし)
1931年千葉県生まれ
東北大学仏文科卒
俳優座演劇研究所、ナンシー国際演劇大学センター修了
元日本大学教授
訳書に『ローランプティ、ダンスの魔術師』『モーリス・ベジャール自伝』『アントニオ・ガデス』などバレエ関係多数